こういうことよくあります。昨年秋頃から今年にかけて,「権利濫用」ないし「公序良俗違反」を主争点として裁判で争うことが続きました。民法1条3項は,「権利の濫用は,これを許さない」と定め,90条は,「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とする」と定めています。裁判で,こういう抽象的な条項を主争点として争うことはあまり無く,私自身30年のキャリアの中で初めてのことです。(以下実際の事案とは異なります)一つ目は,離婚に伴う夫から妻への慰謝料として1億円以上の支払いを約束したことにつき,その後の夫の経済状況の悪化に伴い支払いが不可となったところ,妻が夫に対して残金1億円の支払い請求をすることが,夫を自己破産に追い込むことが必至であること等を理由に権利濫用(民法1条3項)を主張すると同時に,そもそも離婚に伴う「慰謝料」として1億円は法外,すなわち公序良俗に反すると主張している事案。
二つ目は,業務委託の内容が弁護士法違反(非弁行為)に該当し,公序良俗違反ゆえ無効となり,業務委託料請求に理由が無いと争われている事案。
三つ目は,土地に隣地上建物の一部が越境していることにつき,土地所有者が,その建物一部の収去請求をしている件につき,土地所有者の(建物一部の収去を求める)利益よりも,建物所有者の不利益が圧倒的に大きいので収去請求は権利濫用であると争われている事案。
四つ目は,記念誌作製を請け負った出版社からの支払い請求に対し,発注者が,契約上の代金自体が暴利(高額に過ぎる)であり無効(公序良俗違反)と主張されている事案。
2と3につき,裁判所は公序良俗等の主張を認め,1と4は認めませんでした。もちろん事案=事実関係にもよりますが,案外こういう「大鉈」も認められるのだなと,ある意味感心しました。




